2013.07.28.

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関門新ルート構想:総事業費1千億円超!

漏水1日600トン!

3カ年の補修工事費は計80億円と年6億円の維持管理費!


 九州と本州を結ぶ新たな大動脈となる「関門新ルート」を求めてきた関門海峡道路建設促進協議会が26日、山口県下関市で総会を開く。新会長には、九州経済連合会の麻生泰会長(麻生セメント社長)が就任する見通しだ。構想浮上から四半世紀余り。一度は消えたプロジェクトだったが、第2次安倍政権発足により再び動き出した。 
                 
 総会は平成18年7月以来7年ぶり。福岡県の小川洋、山口県の山本繁太郎の両知事に加え、北九州市の北橋健治市長や下関市の中尾友昭市長らも出席し、今後の活動方針などを話し合うことになっている。

 また、災害時の代替路線の必要性や、九州・山口への経済効果などをまとめた要望書を決議する方針。同協議会では8月にも、政府・与党などにこの要望書を届け、新ルート建設に向け働きかけを強める構え。

 同協議会の会長職は、これまで九州電力の松尾新吾相談役が務めてきたが、6月末の九経連会長交代に伴い、麻生氏が後を引き継ぐことになったという。

 関門新ルートは、関門国道トンネル(国道2号、3・4km)の許容量不足や、関門鉄道トンネル(JR山陽線、3・6km)の老朽化に伴い、昭和60年に構想が浮上した。建設省(当時)や地元自治体は、潮流や交通量などの基礎調査を進め、平成12年には建設省が「下関市彦島迫町−北九州市小倉北区西港町付近に橋梁形式が有力」との暫定報告をまとめた。

 ところが、平成20年、福田康夫内閣の冬柴鉄三国土交通相(故人、肩書きは当時)は、野党の「無駄な公共事業」糾弾を受け、全国6海峡横断プロジェクトの白紙撤回を表明。関門新ルートも名を連ねていたばかりに構想は宙に浮いてしまった。

 構想が再び動き出したのは、平成24年7月の山口県知事選で、国交省出身の山本氏が当選したことがきっかけだった。同年9月に地元・山口県選出の安倍晋三総裁が誕生、12月に第2次安倍内閣が発足したことにより、地元では構想復活を求める声が一気に強まり、山口県は25年度予算で5年ぶりに調査費を計上した。

 これに福岡県の小川知事や北九州市の北橋市長らが呼応し、構想に前向きな姿勢を相次いで表明。九州財界も構想実現に向け、本格的に動き出した。

 総事業費1千億円を超えるビッグプロジェクトであり、北九州、下関両市など周辺エリアの活性化に大きく寄与するだけに、地元の期待は今後ますます膨らみそうだ。


 3・4kmにわたって続く薄暗い海底トンネル。片側1車線の対面通行なのでセンターラインのギリギリに大型トレーラーが次々と対向してくる。道幅は8mしかなく、左側は白いタイル張りの壁が迫る。

 関門国道トンネル(国道2号線)は昭和33年に開通した。48年に関門橋が完成し、主役の座を譲ったが、半世紀にわたり、九州−本州の大動脈の一つであることは変わりない。車道の下には無料の歩道(780m)もあり、住民たちの生活を支えている。

 とはいえ、その交通量は、キャパシティ(許容量)をはるかに超えている。1日3万台という通行量は新東名高速道路に匹敵し、トンネル内で渋滞が起きないギリギリの台数で、料金所付近は慢性渋滞となっている。

 平成20〜22年度は1年間のうち100日前後が通行止めだった。トンネルを管理する西日本高速道路(NEXCO西日本)が3カ年計画で補修工事を実施したからだ。

 海底トンネルは塩分が染み込んでくるため、傷みが早く、壁面タイルの貼り替えや、腐食した鉄筋やコンクリートの補修は欠かせない。工事中、関門橋の通行量は2倍以上に増え、しばしば渋滞を起こした。

 維持管理費もバカにならない。3カ年の補修工事費は計80億円。これを10年おきに実施しなければならない。それ以外にも年6億円の維持管理費がかかる。

 JR九州が管理する関門鉄道トンネル(3・6km)はさらに古い。九州と本州を直結する初のルートは、大戦中の昭和17年に完成した。橋は、鉄道省が日本で初めてシールド工法を採用した。

 70年の歳月でトンネル内の海水や地下水の漏水量は1日600トン。トンネル中央は側溝から滝のように水があふれており、JR九州は大型電動ポンプ4基を設置し、常時排水している。

 独立した2本のトンネルにJR山陽線が一日上下200本行き交うが、正午から3時間程度は片方のトンネルが閉鎖され、単線運転になる。打音検査などの保守管理作業を行うからだ。

 トンネル壁面には、至る所に丸印や「ウキ」などの文字が赤いペンキで書かれている。保守管理担当の作業員が、コンクリートのひび割れや剥離(はくり)などを見つけた際に付ける印だ。正式な額は公表していないが、JR九州は維持管理に毎年数億円を投じているという。

 九州〜本州間のトンネルは、新幹線トンネル(18・7km)もあるが、こちらは貨物輸送には使えない。片側3車線の関門橋があるといっても、人口約1300万人の九州の物流ルートは実は心許ない。「綱渡り」といっても過言ではない。

 東日本大震災では、東北地方のサプライチェーンが寸断され、直接的な被害は受けなかった地域でも工場が稼働停止に追い込まれたり、品不足が頻発した。

 それでも道路網は日本海側に代替ルートがあった。橋とトンネル3本が集中する関門海峡で大きな災害があった場合の影響は比べものにならない。


「関門海峡道路建設促進協議会」

 小川洋福岡県知事のあいさつ「関門海峡をはさむ両地域は古来から結びつきが強い。関門新ルートで関門海峡の循環ネットワークを形成することにより、(北九州、下関両市の)関門両都市の可能性と潜在力が花開くはずだ。今後も官民で連携して必要な調査を実施するよう国に働きかけたい」

 山本繁太郎山口県知事のあいさつ「すべての公共事業をムダだと決めつける議論が少し前まであったが、関門新ルートは地域活性と国家的な観点の双方から必要だ。下関、北九州両市は一体として活動しているが、まだ十分ではない。道路はもっとも自由な生活基盤であり産業基盤だ。みなさんと一体に実現の方法を探っていきたい」


 橋とトンネル3本が集中する関門海峡が大災害を被った場合の影響は比較にならない。

 九州経済連合会社会資本部の広瀬香部長はこう力説。

 「関門海峡が遮断されたら日本経済は壊滅すると言ってもよいでしょう。今はあるのが当たり前ですが、ひとたび失われたときの損失は計り知れない。今のうちから対策を考えておくべきだと思います」