2014.12.20.

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逆オイルショック:露・立直しに2年かかる!

プーチン大統領会見!


 ロシア中央銀行は12月16日、政策金利を従来の10・5%から17・0%へ一気に引き上げた。通貨ルーブルの下落やインフレ進行のリスクを軽減する狙い。同日から適用する。12日に引き上げたばかりで、利上げは今年6回目。

 ルーブル相場は15日、来年の大幅なマイナス成長の可能性を指摘するロシア中銀のリポート公表をきっかけに急落。一時、年初から約5割安となる1ドル=65ルーブル台をつけた。ロシア経済の屋台骨を支える原油価格が大幅に値下がりしていることや、ウクライナ危機に伴う欧米の対ロ経済制裁が、ロシア経済に打撃をもたらすとみて、投資家がルーブル売りを加速した。

 15日の米ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、石油輸出国機構(OPEC)が減速に動くことは当面ないとの見方から売りが加速。指標となる米国産標準油種(WTI)1月渡しが4営業日続落し、一時は1バレル=55・02ドルまで下がった。

 原油安は当初、企業や家計の可処分所得を増やすため、「世界経済全体にはプラス」(エコノミスト)との見方が多かった。ただ、それが当てはまるのは米国など基礎体力の強い国か、エネルギーを産出しない先進国などに限られる。海外マネーに頼る新興国では打撃の方が大きい。

 原油安が消費国にもたらすメリットより、ロシアなど産油国のダメージを懸念する見方が広がり、世界の金融市場の動きは不安定となっている。三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは「ロシアの景気不安が結びつきの強い欧州の各国や銀行に波及すれば、世界の金融市場が混乱する可能性もある」とみる。

 ロシアの通貨ルーブルは、中央銀行による政策金利の大幅引き上げにもかかわらず暴落した。プーチン大統領は市場の投機筋を繰り返し批判するが、ロシアの政治・経済など国内要因に基づくものだという見方も少なくない。プーチン氏は18日、国内外の記者を招いて大規模な記者会見を行う予定で、ウクライナ情勢をめぐる欧米の経済制裁をにらみ、どのような見方を示すかが注目される。

 「中銀はルーブルを葬った」(独立新聞)「道を見失ったロシア」(ベドモスチ)。暴落から一夜明けた17日、ロシアの主要各紙には厳しい見出しが躍った。

 プーチン氏は4日の年次教書演説で、「政権は誰が投機筋かを知っている。彼らに影響を及ぼす手段も持っている」と、ルーブル下落の要因は投機にあるとし、それに全面的に対処する姿勢を強調した。

 しかし、翌5日の露メディアには、「政権は下落の要因が投機にあると信じて疑わないが、もっと本質的な理由があるのではないか」(コメルサント)などと疑問を示す記事も出た。

 ロシアの連邦歳入の約5割は石油・天然ガスの税収だ。プーチン政権下で原油頼みの経済構造から全く抜け出せず、石油価格は通貨の信頼に直結している。

 ただ今回の暴落は、2008年のリーマン・ショック以後の通貨の下落幅を大きく超えた。理由として考えられるのが中銀の手法だ。

 中銀は11月、ルーブルが一定の価格幅を超えた場合に介入していた仕組みを撤廃、完全な変動相場制への移行を発表した。しかし、ルーブルに対する不安をむしろ増大させたとされる。

 加えて実施された利上げが、「経済への悲観的な見通しを強めた」(ジェトロモスクワ事務所の齋藤寛氏)との見方が出ている。