2015.09.08.

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世界同時株安:中国から資本逃避の兆候・下!

米国の利上げはあるか!
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 G20にFRBのイエレン議長が欠席している。FRBが依然として9月16、17日の両日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを強行する権利を留保している。
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 中国株式市場では6月12日以降の株価暴落で時価総額が2兆8000億米ドル(約347兆円)も減少した。海外資本は上海・香港両証券取引所の株式相互取引を通じて株を大量に売却し、資金を引き上げた。
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 同時期にインドの株式市場には海外からの資金7050万ドルが流入し、ムンバイ証券取引所(BSE)上場の主要30銘柄で構成するS&P BSEセンシティブ指数(SENSEX)が大きく上昇した。
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 8月29日に閉幕したカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムは、利上げ留保明確にした。市場は、世界同時株安の勃発で利上げが遠のいたとの観測を強めており、FRB幹部がそうしたニュアンスの発言をするのを期待していたが、当のFRB何ら表明せず期待を裏切った。
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 しかし、シンポに参加した各国中央銀行高官は「利上げは既定事実」と見込み、上げに動くことが望ましいという意見が多数を占めた。
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 しかし、FRBのフィッシャー副議長は29日の講演で「中国経済の動向と他国経済に与える影響をいつも以上に注視している」と述べた。
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 経済情勢が混とんとし始めた中で、G20の議長国トルコのユルマズ副首相は会議後、米連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げは金融政策の「正常化」の過程と指摘し、数カ月以内に利上げが行われても新興国に根本的な影響を及ぼす公算は小さいとの見方を示した。また、 FRBの政策には複数のシナリオがあり得るが、対応できるよう準備が進められていると述べた。
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 FRBの利上げ観測の高まりを受けて、トルコなど新興国からは資本が流出している。
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 中国のGDPの修正が0.1P下方修正を行ったが、事情数字は5%程度ではないかと見られているのも事実。そのような中、中国から一気に資本が逃げてしまうよう
なことはないだろうが、ジワジワと生産拠点の閉鎖や地元中国資本に会社売買などが始まることに歯止めをかける事は出来ない。
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 日本経済研究センターの新井淳一氏は、
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 中国の株や不動産にまつわる信用不安の後始末である。4兆元(80兆円)と言われるリーマン・ショック後の大胆な財政金融政策が、中国経済の落ち込みを防いで世界経済の支えになったことは事実であろう。しかし、物事には全て「禍福」がある。世界経済を救ったことが「福」ならば、国内で実体経済とかけはなれた株価の上昇や不動産価格の高騰が起きたことは「禍」の部分だ。当局がそれをコントロールできるのか。
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 問題を複雑にしているのはこの2つの宿題が微妙に絡み合っていることだ。2つが別々に処理できるなら面倒はないが、絡み合い影響し合うことで、先が読みにくくなる。望ましいのは、中国の信用不安が落ち着き、経済そのものの安定路線への復帰を確かめた後に、米利上げが実施されることだが、年末までに利上げを図りたいFRBにはそんな悠長なことを受け入れる気はない。「中国の不安定な株価や景気の減速が米経済成長へのリスクとなる」(イエレンFRB議長)と事態を理解はしても、逆に利上げで米経済の健全な成長を確保した方が、中国のためにも世界のために良いことと、FRBは見ているのである。
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 米国の利上げで起こることは、大方は想定できる。金利差が拡大してドル高に。新興諸国や経済不安を抱える国から資金が流失、米国へ向かう。新興国などの通貨の下落とインフレの加速。それを防ごうとして金利を上げれば弱い経済が音を上げる。利上げをきっかけに世界経済の中の弱い部分が叩かれるということだ。
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 しかも、この一連の動きが実際の利上げの1カ月前にはほぼ完了するのが米国利上げの経験則なのである。1990年代までさかのぼり、過去4回の引き締め転換のケースを見ても、実際の利上げ前にコトの大半が終わっている。市場が前もって反応するからだ。いま世界の為替市場ではこの想定に添った動きが強まっている。米ドルの総合的な実力を示す実効為替レートは12年振りの高値水準。半面、インドネシアルピアは17年振り、南アフリカランドは13年振り、ブラジルレアルも12年振りの歴史的低水準だ。
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 長文なので、一部を抜粋したが、世界第2位の中国が混沌とし始めた中で、EUや
米国、日本が資金応援をしたところで、底なし沼に足を踏み入れるようなもの。そこへ欧州ではシリア難民がドイツと流れ込み始め、大きな問題となり始めている。
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 米国1国の勝ち組ではあるが、ダントツの勝ち方ではない。主要国がドイツ並みの経済状況なら世界の経済もなんとか持ちこたえるであろうが、中国が低迷し始めると自国経済防衛に走り、経済は混とんとする。

 早期利上げを目指すイングランド銀行のカーニー総裁は「中国の動向が利上げの軌道を変えることにはならない」と言い放ったという。
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 中国が経済力と武力を背景に南シナ海への軍事的進出姿勢を強めていたり、各種経済統計が世界的から不信感を指摘されても放置してきたことに対して、G7諸国の中には根強い反発があり、しばらくは静観したいとの思いが今なお強いのが現状だ。中国ほどの経済規模になれば、自力で解決すべしとの声もある。その根強い不信が、今回のG20にも色濃く出たものだ。
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 そもそも肝心のイエレン議長は会議を欠席したのはなぜか。そして、代わりに出席したナンバー2のフィッシャー副議長は、会議初日の8月28日に「まだ結論を出していないし、今出すべきでもない」と利上げの権利を留保した。翌29日の講演でも「中国経済の動向と他国経済への影響をいつも以上に注視している」「FRBが金
融引き締めに動けば、他国経済に影響を及ぼすのは十分に認識している」としつつも、「(米国の)金融政策の正常化を慎重に進める必要がある」と譲らなかったのだ。
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 米国では、今月4日に雇用統計「8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17万3000人増と、予想の22万人増を下回った。だが6月と7月は当初発表から合わせて4万4000人の上方修正となり、賃金の伸びも予想を上回った。失業率は7年半ぶりの水準となる5.1%に低下した。」「米7月雇用統計は、失業率が5.3%、非農業部門雇用者数(NFP)が21.5万人増、平均時給が前月比+0.2%、不完全雇用率が10.4%、労働参加率が62.6%と強弱まちまちであった。ただ、NFPが節目の20万人を超える増加となった事などから、9月利上げの可能性が意識されてドル買いが強まり、ドル/円は一時125.068円まで上昇した。」の発表で8月の雇用統計は強弱がまちまちであった。
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 中国が経済力を背景に南シナ海への軍事的進出姿勢を強めてきたことや、経済統計への世界的な不信感を放置してきたことに対して、G7諸国の中には根強い反発があり、しばらくは静観したいとの思いが今なお強いのが現状だ。中国ほどの経済規模になれば、自力で解決すべしとの声もある。
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 確かに、中国自身が情報統制をやめて、民主的に正確な情報を公開する体制に改めたり、過剰生産設備を廃棄したり、理財商品などの官民の不良債権処理とその透明化に自助努力をすることは、国際的な危機克服策作りの前提条件だ。
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 しかし、振りかえれば、リーマンショックの際の米政府も、バブル崩壊の際の日本政府も、事前の株価急落など市場の警鐘を無視し、対策を小出しにして事態を悪化
させた歴史がある。今度こそ、同じ轍を踏むのは避けるべきである。
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