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   2016.04.11.
   日本全国土砂DB開発:放射光で犯罪現場を絞る!  
   
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 犯行現場の推定に一役!
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 東京理科大の中井泉教授(分析化学)らの研究グループは、犯行現場の推定や食品の産地偽装の解明などに応用できる全国の土砂データベースを開発した。
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 全国3024か所の土砂の特徴を分析・蓄積しており、捜査機関が遺留品の靴に付着した土砂などと照合することで、捜査対象の絞り込みを期待できるという。
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 土砂は、小さな鉱物が集まってできており、地域ごとに組成が異なる。とくに重い鉱物や元素は微量であるため、濃度などを調べると地域を特定できる。
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 研究グループは大型放射光施設「SPring(スプリング)―8」(兵庫県)を使い 、全国3024か所の河川堆積物に含まれる重鉱物22種、重元素20種の濃度や含有率を解析した。ためしに静岡県内の2か所で採取した試料をデータベースと照合したところ、それぞれ23か所と137か所の地域の土砂と、特徴が似ているところまで絞り込めた。
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<国内初、法科学応用を指向した日本全国土砂データベースの開発>
~日本全国重鉱物・重元素分布図を公開~
東京理科大学
公益財団法人高輝度光科学研究センター
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研究の要旨
・東京理科大学理学部応用化学科中井 泉教授らがSPring-8 の放射光を使って7年余りかけて開発を続けてきた、日本全国土砂デーベースが完成しました。本データベースは、法科学に応用すると、未知の土砂の産地が推定できるので、犯罪捜査能力を高め、安全で住みよい社会を作ることに貢献します。
・本研究の最新の成果は「X 線分析の進歩」誌に3 月25 日付けで掲載されます
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【研究の背景】
2009 年度より、世界最高性能を有する大型放射光施設SPring-8 の放射光を、安全安心な社会を実現するための高度な科学捜査力の強化の一環として活用すべく、SPring-8 を用いた本格的な犯罪捜査用の土砂データベースの構築を開始した。図1に示す、3,024 カ所の河川堆積物試料に含まれる重鉱物組成と重元素組成を、放射光を使って明らかにした。
犯罪現場に残されている土砂は事件に関係する場所を推定できる重要証拠となる。しかし、従来は長年の経験と熟達した技術をもった人しか土砂に含まれる鉱物の同定を行えず、また比較・検証するための包括的なデータベースがなかったため、現在ほとんど捜査に活用されていない。裁判員制度により、犯罪や法律に明るくない一般市民の意見を取り入れており、本研究で構築したデータベースのように、熟練を必要とせずに得られる科学的根拠に基づく資料を提示できることは、捜査内容に説得力を与え、冤罪被害を防ぐことにもつながると考えられる。また、犯罪が広域化しており、日本全国のどの地域の土砂かを迅速に絞れる手法の開発は重要である。実用性の高い、世界初の放射光を使って構築された、法科学データベースが完成する。
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【研究成果の概要】
産業技術総合研究所地質調査情報センターの協力を得て提供された、日本全国3,024 カ所から採取された河川堆積物試料について、SPring-8 の全自動放射光粉末X 線回折測定システム(XRD:BL19B2 で実施)により重鉱物組成を求め、高エネルギー蛍光X 線分析(HE-XRF:BL08W で実施)により重元素組成を求めた。そして、採取地点の位置情報をもとに、日本地図上に、重鉱物と重元素の分布をそれぞれ、重鉱物マップと重元素マップとして表し、このたびSPring-8 のHP 上で公開する。これらの2 種類のデータを複合的に解析する事によって、未知の土砂試料がどの地域のものか推定することができるので、土砂を証拠資料とする科学捜査で活躍する。この3 月で、全データの測定と解析が終了したことから、データベースとして公開することとなった。
今回のデータベースに検索システムを完成させれば、犯罪捜査に役立つ情報を点から線、さらに面として広域に展開することによって、警察の科学捜査力の強化と高度化に大きく貢献する事が期待される.
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【今後の展望】
次の実用化ステージとして、科学捜査機関からの依頼をうけて、有料で解析情報を提供するフローの構築をめざす。すなわち、分析依頼の受託から放射光測定、起源推定、データ提供までの一連のプロセスを検証し、法科学応用への実用化を軌道にのせる計画である。
データベースの依頼・相談受け付け窓口はYoshikawa Sci. Lab(代表:吉川裕泰)が担当する。また、未知テスト試料の測定を行い、実際の法科学試料を想定した種々の検討を行い、データベースの実用性を高めることをめざす。本研究は、放射光科学の社会的貢献をより促進するものである。
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