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   2017.06.11.
 野村HD:法人関係情報の管理で法令違反!
   
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近く金融庁に届け出へ!
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  野村ホールディングスが国内営業支店での法人関係情報の取り扱いをめぐり、金 融商品取引法に違反したとして、近く金融庁に届け出ることが複数の関係者への取材 で明らかになった。
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  関係者によれば、野村証券宮崎支店の前支店長は昨年同社が上場主幹事を務めたコインランドリー運営会社のWASHハウスが、株式分割の検討に入るとの法人関係情報を1月下旬に取得。2月中旬のミーティングで、営業社員に株式分割の可能性に言及したという。社員は一般論として株式分割が期待できるとして、投資家に買い付けの勧誘を3月の株式分割の正式発表まで継続して行っていたもよう。
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  法人関係情報とは「公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるもの」を指す。金融商品取引法40条では、証券会社は取り扱う法人関係情報に関する管理や顧客の有価証券の売買等に関する管理について、不公正な取引を防ぐために必要かつ適切な措置を講じるよう求めている。業務上知り得た法人関係情報がインサイダー取引に利用されることのないよう、情報隔壁の再確認、情報管理の徹底が必要とされている。
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  関係者によれば、野村は4月、宮崎支店のモニタリングの結果、社内規則違反の可能性があることが判明、その後当時の支店長と営業社員らへの聞き取りや、顧客との会話録音を調べるなど内部調査を実施した。野村はこの時点で金融庁に法令違反の可能性があることを報告。同支店長は5月8日付で総務部に異動になった。
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  今回の内部調査では、同支店長が他人に利益を得させ、または損失を回避させるためにインサイダー情報を伝達したり売買推奨をした行為は認められなかったという。個人としては金商法には違反しなかったが、社内規定には抵触したとみられる。一方、証券会社としては法人関係情報の管理が不適切で、不適切行為を未然に防ぐ体制ができていなかったため法令に違反したとの結論に達した。金商法を実施するための内閣府令123条では、不公正な取引の防止を図るための適切な措置が定められている。
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  野村HDとWASHハウスの広報担当者らは本事案について言及することはないと話した。また、ブルームバーグ・ニュースは宮崎支店前支店長に電話やメール、訪問などを試みたがコメントは得られていない。金融庁と証券監視委の幹部は個別の事案にはコメントできないとしている。
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  WASHハウスは2001年に設立、布団や毛布などが丸洗いできるコインランドリーの企画、運営、管理を行っている。3月末現在、社員数は103人、九州を中心に東京、大阪など410店舗ある。ダニやアレルギー対策として、布団やじゅうたんなどの大物を洗うことが可能で、ウェブカメラで24時間管理し、リアルタイムでサポートを提供している。
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  株式分割を検討していたWASHハウスは3月10日、普通株式1株につき2株の割合で分割すると正式に発表した。同社は2016年11月22日に東証マザーズに上場、その後株価は上昇を続け、時価総額は6月9日現在約330億円となっている。
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  宮崎県の企業が株式上場を果たすのは、旧日興シティグループ証券が04年に主幹事を務めたコスモス薬品以来12年ぶり。野村が宮崎県の企業の上場主幹事を務めるのは1990年以来初めてで、WASHハウスの上場は同支店にとって重要案件の一つだった。野村のリテール業務は家計の資金の大半が銀行預金にとどまっていることなどから低迷している。 
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  WASHハウスの児玉康孝社長は、2月14日に開催された決算説明会で、具体的な株式分割の計画については触れずに、「機関投資家がどういう要望を持っているか、ある程度理解している」と述べ、「流動性の問題など、いろんなことをしっかり社内で検討しながら対応していく」と語った。
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  関係者によれば、前支店長は2月15日の営業部員との朝のミーティングで、前日の説明会での社長の発言を紹介、株式分割の可能性について言及したとみられる。
同支店長は1月下旬にWASHハウスの幹部から同社が株式分割の検討に入ることを伝えられていた。WASHハウスの株価は14日に8.2%、15日は8.5%上昇した。
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  野村の社内規定では、企業の内部情報を知り得る立場にある支店長は、上場企業の投資家の行動に影響を与える可能性のある情報について支店内においても一切言及できないことになっている。関係者によれば、営業マンの投資家への勧誘行為は株式分割の可能性があるという一般論に基づいた行為で、法人関係情報を用いて勧誘した事実はなかったという。
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  金融庁は野村の内部調査結果の報告を受け、本事案を精査していく方針。証券取引等監視委員会は調査に着手しておらず、今後、組織的な関与や業界全体への影響の可能性の有無により判断していく。
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  日本では12年以降、野村証券など証券会社が関与した公募増資インサイダー取引が相次いで摘発され、深刻な不祥事へと発展、日本市場の公正さに対する信認を揺るがした。当時の最高経営責任者(CEO)と最高執行責任者(COO)は辞任し、金融庁から行政処分を受けた。
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  野村はその後改善策を講じ、「健全な市場の発展に貢献するという社会的使命を全うすべく、十分な態勢を構築し、強化していく」としていた。
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