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   2019.07.11.
電気自動車:本当にエコカーなのか! 
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原材料・金属資源の希少金属の需要が膨大!
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ガソリン車以上に銅の使用量は3~4倍必要となる!
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 次世代の「エコカー」として、電気自動車(EV)が世界的に急速に普及する勢いだ。EVは、運転する環境では「エコ」といえるが、生産過程においても部品は少なく、従来の自動車メーカーでなくても参入できるので「エコ」と言えるのかなと思って調べると、逆に希少金属を使う点では既存車より多く、エコとは言えないのではないだろうか。  
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 EVの生産には、原材料として金属資源の需要が膨大な量になる。このことによって鉱山の規模が拡大するとともに、サプライチェーン最上流の採掘・選鉱工程における環境・社会に対する影響は極めて大きくなっている。  
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 EV以外の分野でも、世界の金属需要は膨大な量になっている。今後、さらに先進ロボット、電気自動車、再生可能エネルギー、IT機器、IoT、AI、5Gなど、技術が進歩するほど金属需要は増える一方だ。しかし、地球上(特に陸地)の資源には限りがあり、需給ギャップが予測されている金属、つまり「枯渇」が懸念されている金属も多い。
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 電気自動車の充電 まずは「ベース・メタル」(社会の中で大量に使用され、生産量が多く、さまざまな材料に使用されてきた金属)と呼ばれてきた銅。  需要サイドから見ると、2018年の2400万トンをベースとして年率3.5%伸びるとした予測によると、2030年には総需要3650万トンに対して供給能力は2900万トンで頭打ちになり、750万トンの供給不足となる。
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このような需給ギャップの主な原因は、
需要を大幅に増加させるエンジンの電気自動車(EV)と太陽光、風力発電等再生可能エネルギーだ。当然ながら、EVの銅使用量はガソリン車の3~4倍にもなることを認識すべきだ。  太陽光発電に必要な銅はメガワット当たり2.45~7トン、陸上風力発電で2.54~6.77トン、洋上風力発電で9.5トンになる。
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 さらに中国の銅消費量は世界の40%を占め、なお高い伸びを示している。それにもかかわらず国民1人当たりの銅消費量はまだ6kgで、日本やドイツなど先進諸国の1/2~1/3。今後さらに消費拡大すると予測され、大きな懸念材料となっている。
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 供給サイドの問題としては、以下のようなものがある。
・鉱石品位の低下が近年著しく、大規模露天掘り銅鉱山の鉱石品位は0.2%にまで低下している ・鉱山が発展途上国の熱帯雨林など、生物多様であるばかりか先住民族が住むような地域にシフトしてきている
・採掘規模の拡大によって深刻な環境破壊が起きている。人権・労働条件そして腐敗などの問題から地域住民や国際NGOなどの反対があり、開発期間が長期になってきている。開発費の高騰なども  ちなみに、銅の地殻中に存在する量は55ppm。これに対して年間2000万トンの生産量というのは、あまりに多すぎる。「ベース・メタル」と呼ばれてきたものの、実は“レアメタル中のレアメタル”と言ってよい状況になっている。
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 EVのリチウムイオン電池に使われる「コバルト」の安定供給は難しい状況だ。
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 森林伐採と表土掘削 そのほか、EVの普及に大きな影響を受ける銅以外のレアメタルといえば、リチウムイン電池の正極材に使われる、コバルト、ニッケル、マンガンだろう。
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 コバルトについては、遍在性と希少性が高い。特にコンゴ民主共和国への遍在性が65%と異常に高く、近年「ラテライト型」と呼ばれる、採掘に伴う環境負荷が大きいニッケル鉱床の開発が増えている。そのことにより、その副産物として採掘されるコバルトが多くなっていることが問題だ。
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 コバルトの地殻内の存在量は25ppmと、希少性が非常に高い。年間生産量は十数万トンで、銅に比べると2桁少ない。それにもかかわらず、2030年の世界の需要量はEVのリチウムイオン電池用だけでも約30万トンと予測され、安定供給は厳しいと考えられる。
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 リチウムイオン電池用コバルトの割合は、総需要量に対して2006年に20%、2016年で51%だったが、2020年には62%と予測されている。
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 EV用リチウムイオン電池の急速な需要増によって、スマートフォン用電池に必要なコバルトがひっ迫することを恐れたアップル社が、2018年2月にコンゴ民主共和国で直接資源確保に動いたことで世界に衝撃を与え、価格が急騰したことは記憶に新しい。
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 機器別のコバルト使用量をみると、スマートフォン5~10g、タブレット30g、ラップトップ100gに対して、EVは10kg。桁違いに多い。
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 電気自動車(EV)の世界的な市場拡大に伴って、銅やコバルト・ニッケルなどのレアメタル(RM)とともにレアアース(REE)の需要は旺盛だ。IoTやAIなどの急速な“進歩”によって、さらに飛躍的に伸びることは明白となっている。
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 しかし、銅やレアメタルと同等あるいはそれ以上に、レアアースの採掘・精製に伴う環境汚染は激しい。しかし、人々は “Out of Sight,Out of Mind”になっているために「EVはエコカー」というイメージが定着している。
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 EVのモーターに使う高性能磁石をつくるためには、レアアースのネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ディスプロジウム(Dy)、テルビウム(Tb)などのレアアース・メタル(REM)を必要とする。
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 しかし、不都合なことにレアアースの世界市場は、86%(2017年)をいまだ中国が寡占支配している(2011年時点では97%)。その中国のレアアース資源の75%を占めるのが「北方鉱」と呼ばれる内モンゴル自治区の白雲鉱山であり、残りの25%は「南方鉱」および「四川鉱」と呼ばれ、江西省・福建省・広東省・四川省にわたる数多くの小規模鉱山である。
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 中国の北方鉱はもともと大規模鉄鉱石鉱山で、1990年代から、膨大な量になっている廃棄物(mine waste)の中に含まれるレアアースを回収することをはじめた。鉄鉱石の副産物であることと、環境対策を軽視した操業からコストが安く、安値攻勢で世界の市場をほぼ独占してしまったものである。
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 レアメタルを生産するためには、採掘した鉱石を硫酸で溶かし、分離・濃縮を繰り返して高純度のレアアース酸化物(REO)にした後、電解・還元してメタルにする。鉱石の精製プロセスで発生するずさんな廃硫酸処理による水質・土壌汚染と、廃棄物の中に含まれる放射性物質トリウム(Th)、ウラン(U)による、放射能汚染が問題となっている。
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 南方鉱は、北方鉱とは鉱石のタイプが異なる。北方鉱には含まれない、ディスプロジウムやテルビウムなど「重希土類」と呼ばれる耐熱高性能磁石をつくるのに重要なレアアースを含んでいる。その希少性から、ネオジムなど「軽希土類」の100倍の価格で取り引きされている。
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 他国のレアアース鉱山は、軽希土類の北方鉱タイプが多いのが中国の強みとなっている。しかし、その精製・分離にはやはり多量の硫酸を使用するため、廃酸処理が杜撰であるため深刻な鉱害問題を起こし、中国政府の環境規制が強化されてきている。そのためにも、最近とくに違法採掘と密輸出の取り締まりを厳しくしている。
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